2011年 11月 7日 共同記者会見 (78回)
■IWJ Web Iwakami - 岩上安身オフィシャルサイト
- http://www.ustream.tv/recorded/18369063
- http://www.ustream.tv/recorded/18370311
- フリーライター木野龍逸さん&IWJ Staff さんによるまとめ(前)
- フリーライター木野龍逸さん&IWJ Staff さんによるまとめ(後)
■ニコニコ動画
Twitter 視聴者の声
■会見のポイント
週1回の頻度の統合会見が2週連続で続き、今回は政務官汚染水飲水会見から1週間後の会見となる。長期間、統合会見が開かれない間、11月1日夜に再臨界の可能性を示す半減期 9日のキセノン135が検出されホウ酸を注入する事態が発生している。
この件に関して本日、園田政務官は冒頭、一連のキセノン報道についてクビを傾げたくなるような説明があり、質疑の半分は冒頭の園田政務官の発言に対して記者から苦言が相次いでいる。
週一の統合会見では情報量が少なく、とても福島第一原発の状況は追えず、指摘されている政府の説明責任が果たせていない事も同時に示している。経緯がわからないと質疑の内容が理解出来ないと思うので、簡単に経緯について触れておく。
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Xe(キセノン)135検出 臨界騒動?の経緯
2号機にガス管理システムを設置したことにより 格納容器内の空気中に含まれる詳細な核種分析が行えるようになった事で、核分裂の際に生成される Xe135 が見つかる。この核種は半減期が 9時間と短いため、再臨界の可能性を否定できずホウ酸注入を始める旨の緊急報告が東電から報道関係者にメールで通知。
翌2日の午前11時の定例会見は10時20分に繰り上げて報道陣に説明。(
ニコニコ)Xe135 の正確な量を知るための分析結果待ちの状態に。既にネット界隈では外部専門家が再臨界の可能性について 大規模再臨界ではない事の一定の結論は出ていて、局所的再臨界なのか、自発的核分裂により生成されたのか裏付ける分析結果待ちの状態。
ネット界隈の動きを簡単に追ってみる
キセノン検出関係ツイート
http://togetter.com/li/208627
11月2日 6:10 (FNN)福島第1原発2号機の格納容器から半減期の短い放射性キセノンが検出された可能性
11月2日 10:02 (産経)福島第1原発2号機で核分裂の可能性 キセノン検出、ホウ酸注入
11月2日 12:10 (産経)【放射能漏れ】キセノンとは? 半減期5日と9時間 ウランが核分裂する際にできる希ガス
11月2日 12:16 (産経)福島第1原発2号機キセノン検出「事実関係を確認したい」 斎藤副長官
11月2日 12:36 (読売)キセノン誤検出の可能性もありうる…官房副長官
11月2日 13:21 (時事)2号機、一時的臨界の可能性=キセノン検出か、ホウ酸水注入-東電、詳細を分析
11月2日 18:20 (官邸)東電福島第一原発2号機でキセノンが検出された可能性がある件について[官房長官記者発表]
11月2日 18:53 (読売)「キセノン検出」官邸へ連絡遅れる…保安院注意
11月2日 21:23 (産経)【放射能漏れ】気体はキセノンと確認 保安院「自発核分裂の可能性高い」
11月2日 21:37 (FNN)福島第1原発2号機キセノン検出問題 東電、2日採取の空気から再びキセノン検出と発表
11月2日 21:49 (読売)福島第一原発、再びキセノン…核分裂の可能性
11月2日 22:35 (産経)【放射能漏れ】キセノン検出で地元福島「収束へきちんと対応を」
11月2日 22:48 (マイコミ)福島第1原発2号機で"核分裂反応"の可能性 - キセノン検出、ホウ酸水を注水
11月2日 22:59 (毎日)福島第1原発:キセノン検出確認 「長時間臨界」は否定
11月2日 23:21 (朝日)福島2号機、小規模臨界の可能性 キセノンを検出
11月2日 23:44 (NHK)キセノン検出 局所的な臨界か
11月3日 12:00 (産経)東電「臨界ではなかった」 キセノン原因は自発核分裂
11月3日 12:08 (FNN)福島第1原発事故 放射性キセノン検出は、燃料が自発的に核分裂したものとの判断
11月3日 1:24 (FNN)福島第1原発2号機キセノン検出 保安院から官邸への連絡に遅れ 深夜の連絡を翌朝報告
11月3日以降も各紙報道は続くが、その内容は自発核分裂を結論づける報道に。つまり、ほぼ2日で収束している。この一件で政府の事故収束担当の再臨界に対する認識と政権実績を強調するために スケジュールありきで全ての物事を進めている実態が墓穴を掘る形で改めて路程する形になっている。
それを取り繕うかのように冒頭、園田政務官は、連絡の遅さ、地元を不安にさせた政府の責任を謝罪。公然と問題点をすり変えて謝罪している。何に対して謝罪しているのか全く理解出来ない。
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信用が地に落ちた東電と保安院。全てを頭ごなしに否定する向き
同時に気になったのは再臨界に反応するネット界隈の動き。つくづく信用が地に落ちている東電や保安院でも、全てが全て嘘だと根拠もなしに頭ごなしに否定する事は危険。
今回の問題は 「東電や保安院が意図的に再臨界をかくして無理やり自発的核分裂に結論付けた」という事でもないし、また「再臨界により直ちに危険な状態に陥った」ということでもない。
- 検出されたキセノン135の実測値から臨界で発生した量にしては少なすぎる。
- 中性子を吸収するホウ酸を注入してもキセノン135が検出、量も変わらなかった。
- プラントパラメーター、発生している熱量、モニタリングに変化が無い等の理由で最近臨界が起きたと考え難い。
つまり、以前からこのような状態が続いており、ガス管理システムがまだ取り付けられていない1号機、3号機も同じ状態であると考えられるという所に落ち着いている。
再臨界においては、通常の原子力発電所の運転状態のような大規模な臨界を起こすには様々な条件が必要で、どろどろに溶け落ちて原形を留めていない状態では、通常の原子力施設が運転中に暴走して発生しうる大規模臨界が発生する事は考え難く、発生しても局所的な臨界に留まる可能性が高い。ただし部分的に固まった箇所で局所的な再臨界が起きる可能性は否定できない。
今回の騒動で最も重要なのは直ちに危険な状態ではなく、大丈夫、大丈夫と言い続けてきた政府、東電、保安院が、不確かさの中で物事が進んでいる事が改めて露呈した事。マスメディアが報じない以上、この事は福島県民だけでなく日本人が気づかないといけない。
余震が続く状態で、しかも燃料の状態が分らない。大きな揺れで中の燃料がどうなるか分らないし、その場合は局所的な再臨界が起きる可能性だって評価出来ないはず。なのに、安全だ、確率論まで引っ張り出して福島第一原発の健全性を強調する事ばかりに躍起になっている政府。どう思うか。
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背景 ~「冷温停止状態」という極めて不確かな大前提
格納容器の中、燃料の状態、格納容器の破損状況が全くわからない状況下で 冷温停止状態を定義し、ステップ2の達成目標の条件としている。最近、細野大臣はステップ2の達成目標達成を年内に前倒しすると発表し、福島第一原発は安定しているし、計画的避難準備区域(20~30km)を解除、同日には収束したかのような現地のお祭りムードの映像が流れていた。
冷温停止は 通常の原発が運転を停止させている状態の事で、核分裂を抑制、燃料の温度が下がっている状態を示す言葉。それを炉の状態が分からない、燃料がどうなっているか、どこにあるのか、ちゃんと水がかかっているのかさえ分からない。分かっているのは格納容器底部の温度と注水量増やしたら下がる事。その相関関係もはっきりと示していない。
そんな状態を冷温停止と呼べるのか、という指摘に対しては「冷温停止と言ってない、冷温停止状態だ」と説明。妥当性は専門家が議論して決めたから。国民が理解して納得できるような回答を今だに示していない。原発マネーにあやかる テレビ、新聞、大手既存メディアが報じないことをいい事に、淡々とスケジュールありきで物事が進んでいる状況。
今回のことで問題なのは、ちゃんと事象の確認がとれてから発表すべきだった事が問題なのではなく、東電が夜中に報道記者に通知する程、再臨界の可能性について危機感を持って行動したこと。
そこは迅速な情報公開の観点から政府が東電を責めるべきではないし、東電に追求すべきは再臨界の可能性をどのように認識していたかという事。しかし、冒頭の園田政務官の(政府)説明は、東電に情報公開のあり方について厳しい対応を示し、保安院から政府への情報伝達の遅れに対し国の対応について謝罪するものだった。
また、情報公開のあり方について考えを改める事を示唆。完全に政府が問題を認識していない事を自ら露呈した目も当てられない政府説明となっている。記者団の苦言に対して話を全く理解出来ない園田政務官。私には、とにかくスケジュールありき、早い段階での実績強調をしたいばかりに動いているこれまでの政府対応をすっとぼけているようにしか見えない。
臨界が起るという事は炉の気密性が保たれていない以上、放射能が外部に放出される訳であり「放射性物質放出が抑制できている事」という「冷温停止状態」の条件が破綻してしまう。
今回の一連の騒動は、
「冷温停止状態」という極めて不確かな大前提の元、政府が避難解除、除線を進めている事が露呈した事に尽きるが、当然、大手記者クラブメディアはそのように報道することはなかった。
■本日の議題